平成7年石川県産業連関表の概要



1 産業連関表とは


 私達の身の回りにある物は全て産業が作りだした産物です。そして、私達の手元に来るまでに様々な産業が介在しています。例えば、テレビを生産するにはプラスチック、ガラス、半導体等の様々な産業が生産した物を使って製造されています。また、それらを運搬するのに運送業の手も借りています。そして、最終消費者である私達が購入しているわけであり、各産業は孤立したものではなく、産業相互間及び産業と最終消費者の間で密接に結びついています。
 このように、ある定められた1年間に一定地域で行われた財貨・サービスの流れを一つの表にしたものを「産業連関表」といいます。産業連関表は国において5年毎に作成され、本県でも昭和50年表から5年毎に作成しており、平成7年表で5回目となります。












 
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2 産業連関表からみた本県の特徴

(1) 県内生産額の伸びが低調だった本県経済

 
図1 県内生産額等の推移                              図1 県内生産額等の推移
 平成7年に県内の各産業の生産活動によって生み出された財貨・サービスの総額、すなわち県内生産額は8兆2,629億円で平成2年の7兆3,468億円に比べて1.12倍の伸びで、平成2年〜7年の平均年率は2.4%にとどまり、昭和60年〜平成2年の平均年率6.6%と比べて著しく低下しました。(図1)
 これは、バブル経済崩壊後の景気が低迷し、その後の景気回復のテンポが緩やかであったことによるものと考えられます。

                                









  
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(2) さらに進んだ経済のサービス化
 県内生産額の産業別構成比について、平成2年と平成7年を比較すると、電力・ガス・水道、商業、金融・保険、運輸・通信、公務、サービスで上昇しています。一方、農林水産業、製造業、建設、不動産などで低くなっており、とりわけ製造業の割合が全国と比較しても低くなっています。これは本県の基幹産業である繊維、一般機械、電気機械等の占める割合が高いものの、繊維、一般機械では成熟した業種が多く、生産額の増加に結びついていないためと考えられます。また、サービス業については、平成2年の20.8%から22.2%に上昇して拡大する傾向が続いており、全国と比較しても高い割合にあることから、本県においても経済のサービス化がさらに進んだといえます。(図2)

                      図2 生産額の産業別構成比    図2 生産額の産業別構成比







  
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(3) 上昇した県内自給率と前回に続く移輸出超過
 
                                    図3 産業別自給率図3 産業別自給率
 県内需要のうちどれだけを県内生産で賄ったかを示す県内自給率は平成2年の64.1%から平成7年の68.8%と4.7ポイント伸びる結果となりました。また、移輸出額から移輸入額を差し引いた県際収支では、平成2年に続き移輸出超過となっており、超過額は947億円となりました。(表1)
 産業別の自給率を平成2年と平成7年で比較してみると、電力・ガス・水道、商業、金融・保険、運輸・通信等で平成2年に比べて高くなり、逆に農林水産業、サービス等で低くなっています。全体的にみると、農林水産業、鉱業、製造業などが含まれる第1次、第2次産業で特に低い自給率となっており、県外(国外を含む)に大きく依存していることがわかります。(図3)


表1 昭和50年〜平成7年の県際構造

                            
  
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3 産業連関表の利用方法及び分析事例

(1)利用方法
 産業連関表には全ての財貨・サービスの取引の流れが記されているので、表をそのまま読むことによって、表作成年次における県内の産業構造や産業部門間の相互関係など経済の構造がわかります。また、産業連関表から産出されるいろいろな係数を用いることにより、ある産業の生産が他の産業にどれだけの生産を誘発するかなどについて予測することができます。

(2)分析事例−平成7年石川県産業連関表の総合大分類32部門表を使用−
 イベント事業10億円(施設整備費7億円、第3セクター運営費3億円)の場合

  7億円 × 1.661054(建設)            = 5.493906億円
  3億円 × 1.831302(その他の公共サービス) = 5.493906億円
        計                        =17.121284億円

(参考)経済波及係数一覧(一部抜粋)
   産 業 分 類   経済波及係数
建設   1.661054
運輸   1.788957
その他の公共サービス   1.831302
対個人サービス   1.650020

 また、イベント事業の見込み観光客数を1万人(うち宿泊客数3,000人)とし、交通アクセスは鉄道3,000円(10,000円)、1人当たりの飲食費、宿泊費をそれぞれ2,000円(10,000人)、10,000円(3,000人)と仮定した場合(交通費3,000万円+飲食費2,000万円+宿泊費3,000万円=0.8億円)

  交通費 3,000万円 × 1.788957(運輸)        = 0.5366871億円
  飲食費 2,000万円 × 1.650020(対個人サービス) = 0.3300040億円
  宿泊費 3,000万円 × 1.650020(対個人サービス) = 0.4950060億円
         計                               1.3616971億円

 したがって、イベント事業を一事業とした場合、支出合計は10億円+0.8億円=10.8億円、経済波及効果は17.121284億円+1.3616971億円≒18.48億円となり、約1.71倍の経済波及効果が予測されることになります。

(積算方法−事業毎に経済波及係数表の産業分類に該当する経済波及係数を乗じて計算する。)

※今回の事例では最終的な効果のみを算出しましたが、本来は直接効果、第1次間接効果、第2次間接効果を求めた結果、経済波及効果が算出されます。

  
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